1.はじめに
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当社は、上場企業に対する株式投資などを通じて、お客さまから委託された資金の投資収益を最大化することを目的に行動しています。この時、運用会社としての受託者責任を果たすために行う当社の行動は、投資先企業やその先にある社会・経済全体の持続的発展にも同時に寄与するものであることが望まれ、これらを両立するインベストメントチェーンの一端を担うことが、機関投資家である当社の責務であると認識しています。
ここに定める「責任ある投資家としての考え方と行動方針」は、機関投資家として果たすべき社会的責任に対する当社の考え方と具体的な行動方針です。
2.機関投資家である当社に求められる責務
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社会の公器である企業の株主として、投資先企業の価値向上や持続的成長に資する責務 |
当社に資金を委託している顧客・受益者の多くは、企業の最終投資家であると同時に従業員や消費者、取引先などとして、投資先企業との間で別の係わりを持つステークホルダーでもあります。したがって、当社が受託者責任を果たすために投資収益を最大化しようとする行動は、同時に投資先企業の価値向上や持続的成長を促し、ひいては社会・経済全体の持続的発展に繋がるものであることが望まれます。 機関投資家である当社は、投資収益の多寡のみならず、投資収益の源泉である企業の付加価値創造およびその分配のプロセスに強い関心を持つ責務があると考えます。 |
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公共のインフラである資本市場の参加者として、市場の健全な発展に寄与する責務 |
資本市場は、価格発見機能と流動性供給機能を通じて効率的な資源配分を可能にしている公共の財産です。資本市場の効率的な資源配分を可能にするためには、多数の参加者による自由で活発な投資行動が必要不可欠です。したがって、資本市場の存在を前提に持ち、そこから恩恵を受けるプロの市場参加者の一人である当社の投資行動は、資本市場の健全な発展に寄与するものであることが望まれます。 機関投資家である当社は、企業の株式を公共の資本市場で取引するにあたり、主体的に評価した中長期の企業価値・株式価値に基づく投資判断を行う責務があると考えます。 |
3.投資先企業に対する期待像
当社は責任ある投資家として、投資先企業に対して、資本市場を通じて得た資本を最大限有効に活用しながら企業価値向上と持続的成長を追求し、株主利益の尊重とともに社会・経済全体の健全な発展に貢献することを求めます。
したがって当社は、投資先企業において下記項目が経営目標として掲げられ、その実現に向けてコーポレートガバナンスを形成する様々な要素や枠組みが有効に機能していることを求めます。
一、社会の需要に応え、付加価値を創造し、長期的に利益を生み出すこと
一、適切な雇用・資本政策を採用し、創造した付加価値を適切に配分すること
一、公正で正確、かつ迅速な情報開示により、投資家の予見可能性を高めること
一、社会の一員として倫理的に行動し、環境問題等に対する社会的責任に貢献的であること
4.当社の取り組み
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良質なアクティブ運用の提供 |
当社の投資哲学は、『いかなる資産も本来の投資価値を有しており、市場価格は中長期的にはこの投資価値に収束する。したがって、市場価格と投資価値の乖離が超過収益の源泉となる』という考え方です。機関投資家としての当社の社会的使命の一つは、「責任ある投資家の立場を自覚した良質なアクティブ運用を提供することである」との信念から、当社は創業来一貫して、中長期の視点から評価した株式の本源的価値を投資判断の基準とするアクティブ運用を中心に事業展開を行っています。 投資先企業の価値向上や持続的成長に関心を払いながら、中長期的な投資収益の獲得を目指すアクティブ運用では、財務情報のみならず非財務情報(ESG情報など)についても的確に把握することが求められます。また、適切な投資価値を導き出すためには、企業の業績動向の把握と予測にとどまらず、その企業が抱える潜在的なリスクを的確に把握し、評価することが求められます。 このような財務情報と非財務情報が統合されたアクティブ運用による価値判断は、企業の経営判断基準との同期を可能とし、運用の実践そのものがコーポレートガバナンスとしての機能を持ち得ます。また、このようなアクティブ運用のもとでの主体的価値判断を通じた銘柄売買は、資本市場の価格発見機能と流動性供給機能の一翼を担うものです。 当社は機関投資家の責務として、競争原理のもとでの企業家の創意工夫を引き出し、持続的成長へのインセンティブとなるような良質なアクティブ運用の提供を通じて、顧客・受益者に対する中長期的なリターンの拡大を図るとともに、社会・経済全体の持続的発展と資本市場の機能向上に貢献します。 |
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(2) |
投資先企業との対話(エンゲージメント) |
当社は、責任ある投資家の立場を自覚した良質なアクティブ運用を提供するため、当社のアナリストやファンドマネージャーが投資先企業や投資候補企業と日常的に対話を行える関係を構築します。そのうえで、投資判断基準である中長期の視点から評価した本源的価値を理解することを対話の軸とし、その源泉となる付加価値創造およびその分配のプロセスの把握に努めます。 1986年の創業以来、中長期の投資価値に基づくアクティブ運用を一貫した運用手法のもとで実践してきた経験は当社の強みです。様々な産業や企業に対する投資経験を持つ当社アナリスト、ファンドマネージャーの知見を活かし、投資先企業や投資候補企業の企業価値の向上と持続的成長に資する建設的な対話を行います。 また、当社は投資先企業が先に掲げた期待像に向かって経営されることを望み、その実現に向けて投資先企業に働きかけを行います。万一、期待像に反する経営姿勢が見られれば、それら企業に対して改善を求めます。当社はこの行動の一環として、投資先企業の議決権をここで定める理念に則って行使します。コーポレートガバナンスを構成する主要な要素である取締役・監査役(会)、報酬制度、内部統制システム、コンプライアンス、投資家リレーション等が、期待される役割や機能を適切に果たしているかを吟味し、議案の賛否を判断します。 当社は、企業との対話に関する顧客・受益者の期待を積極的に受け止め、企業との対話の内容を顧客・受益者に分かり易く報告することを通じて、企業の価値向上や持続的成長を焦点とする当社の対話が投資リターンの拡大に繋がっていることを具体的に実感していただけるよう努めます。 |
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責任投資の普及に向けた積極的取り組み |
当社は、これまで述べてきた当社の責任ある投資家としての考え方が社会全体に幅広く共有され、より大きな成果に繋がることを望みます。その実現のため、当社はまず自らが責任ある投資家として相応しい運用体制や運用プロセスを適切に備え、ここで定める行動方針をより高い次元で実践できる実力の向上に努めます。そのうえで、様々な投資家層の多様なニーズを的確に捉えた特色のある運用プロダクトを提供していくことで、責任投資の普及を促進します。 これからも、顧客・受益者の期待に応える良質なアクティブ運用プロダクトの提供に積極的に取り組むことを通じて、機関投資家としての当社の社会的責務を果たし、顧客・受益者の中長期的な資産形成に貢献してまいります。 |
以上