進化するESG投資〜企業・投資家が取り組むべき気候変動課題〜

去る2019年11月14日、都内で気候変動と最新のESG投資に関する、有識者によるパネルディスカッションが開かれた。

メンバーは以下の通り(敬称略)。

  • モデレーター

    水口教授
    高崎経済大学経済学部教授

  • パネリスト

    荒井 勝
    NPO法人 日本サステナブル投資フォーラム 会長
    早稲田大学大学院経営管理研究科非常勤講師

  • パネリスト

    関 正雄
    損害保険ジャパン株式会社CSR室シニアアドバイザー
    経団連 企業行動・SDGs委員会 企業行動憲章タスクフォース 座長
    明治大学経営学部特任教授

  • パネリスト

    中尾 剛也
    SOMPOアセットマネジメント株式会社 常務

モデレーター・水口教授の進行により、活発なディスカッションが始まる。

  • 水口:

  • 1998年に『ソーシャルインベストメントとは何か』という本を出したのだが、翌年の1999年にはそのコンセプトを体現した運用商品「ぶなの森」が発売され、ついに20周年を迎えたことは感慨深いものがある。
    今では気候変動による甚大な被害が誰の目にも明らかになり、世界中で様々な取り組みが進められる中、「ESG投資」も脚光を浴びるようになったが、「ぶなの森」はそれを先取りした商品だったと言えるだろう。
    そこで今回は、「ぶなの森」が歩んできたこれまでの20年を企業や投資家の行動という視点で振り返り、それを踏まえてこれからの20年を展望してみたい。

気候変動による環境リスクは多くの課題と密接に関係する

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  • 荒井:

  • 企業のグローバルリスクの認識は、リーマンショックの翌年の2009年には経済課題に注目が集まっていたが、この10年で大きく変化した。世界経済フォーラムの「第14回グローバルリスク報告書」によれば、発生の可能性の高さ、影響の大きさ共に環境リスクに注目が集まっている。

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  • 気候変動による環境リスクは、他の社会課題と強く結びついてもいる。自然災害や生物の多様性に大きな影響を与えるのはもちろん、社会や地政学的な課題にも影響を与える。水や食料の危機を招いたり、社会不安を増幅し、失業者の増加や金融メカニズムの崩壊をも誘発する危険性を秘めている。

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企業に求められるリーダーシップ

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  •  関:

  • 東日本大震災の年、2011年に1兆円を突破して以降、日本の災害保険金総額はずっと1兆円を超えている。2018年には度重なる大型台風の被害も影響し、東日本大震災の年を超える、史上最高額の1.6兆円に達した。

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  • このように、気候変動は直接私たちの生活、そして命に関わる事態になっており、もはや気候非常事態と呼ぶべき状況である。

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  • 保険会社は環境リスクの影響を如実に受けることもあり、いち早くリサーチを開始し、対応策を検討してきた。その中で分かってきたのは、リスクに対処する守りの活動だけではなく、根本原因を解決させる攻めの活動をしなければならないということ。1990年には社内に地球環境室を設置。1992年にはリオの地球サミットに、当時の会社のトップが参加するなど率先して行動することで、率先してリーダーシップを取ってきた。
    そんな中で模索しながらたどり着いた解決策のひとつが、現在ESG投資と呼ばれるようになった環境リスクに配慮した金融商品「ぶなの森」である。

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  • SDGsを成し遂げるにはトランスフォーメーション、社会経済のシステムレベルで大変容を起こさなければとても成し遂げられることではない。そのためには、経済の担い手であり社会に大きな影響力を持つ企業が、政府の政策や規制を待つことなく率先して動かなければならない。

日本のESG投資の先駆け「ぶなの森」20年間の歩み

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  • 中尾:

  • 20年前に発売を開始した日本のESG投資の先駆けでもある「ぶなの森」は、環境というマクロ的で普遍的なコンセプトを掲げる中で、TOPIXのパッシブファンドに比べて30%の超過リターンを得ている。現在260億円の残高を持ち、今でもじりじりと口数が増えている珍しいファンドである。確定拠出年金で多く採用されており、お客様の長期資産形成のニーズとファンドコンセプトがマッチした形だ。

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  • これらの実績を支えてきたひとつの柱は、20年間続くSOMPOリスクマネジメント社による独自の環境リサーチ。毎年の企業へのアンケートによる環境リサーチは、評価に反映するだけでなく必ず企業にフィードバックしている。意識の高い企業はそのフィードバックを受けてさらに高い目標に取り組み、当社からはさらに厳しいアンケートを実施する。この好循環はエンゲージメントの好事例だと考えている。

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  • もうひとつの柱は、当社が中長期のバリューインベスターであるということ。バリュー投資は一時的に市場評価を落とした会社が、本来の投資価値に戻っていく過程がリターンの源泉になる。TCFDの報告書にもあるが環境経営に取り組む企業の多くは回復力<レジリエンス>が高く、そういった企業とバリューの運用手法の相乗効果がぶなの森をはじめとした当社のESGプロダクトのパフォーマンスにつながっていると考えられる。2019年10月にはESG商品の残高が1千億を超えた。

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  • アクティブバリューの運用スタイルを維持することで様々なESG課題を自分ごととして扱うことができ、同時にお客様のリターンに繋がると考えている。

グローバルに加速する環境イニシアティブと日本企業

  • 荒井:

  • 持続可能な開発目標<SDGs>は近年企業にも良く知られる存在となったが、その17の目標のうち、少なくとも12が環境に関わるものである。

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  • 海外において、環境についてはCDP、Climate Action 100+、TCFDなど様々な取り組みがすすんでいる。
    こうした取り組みが先行しているのがヨーロッパであり、EUにおいてはサステナブルファイナンスのアクションプランの策定がすすんでいる。10の目標を掲げ、資本の流れを持続可能にして、金融リスクをコントロールすることを目指している。

  •  関:

  • ヨーロッパは環境取組みに対する市民の意識が高く、国、企業もそうしたプレッシャーの中で取り組みを進めているため、世界の中でも特に先進的であると考えられる。
    このようなイニシアティブには、欧州に遅れることなく日本企業も積極的に参加すべきだ。当社も1995年から、WBCSD日本唯一の金融機関として中核的な活動に参加したことを皮切りに、1995年にUNEP F1、2006年の発足当初にPRIに署名した。国内でも、2012年にはPSIの起草WGメンバーとして立ち上げをリードしてきた。

  • 中尾:

  • 投資の世界が社会課題に貢献することを求められている。当社では2017年に責任投資推進室を設置、ESGスペシャリストを置き、PRIをはじめとしたグローバルイニシアティブに積極的に参加している。
    世界の大手投資家が温室効果ガス排出量の多い大企業に気候変動の対応を働きかけるために発足した、気候変動対応に関する集団的エンゲージメント<クライメイトアクション100>に、発足当初の2017年に署名。日本の対象企業との対話責任者を拝命しており、国内外のアセットマネジメント企業とタッグを組んで気候変動という共通の敵に取り組んでいる。
    また、ポートフォリオにおける温室効果ガスを削減する取り組み<モントリオールカーボンプレッジ>にも参加。ヨーロッパの公的年金とは、ポートフォリオの温室効果ガスを、3年間で半減することを義務とした契約を行っている。

これからの20年に向けて

  • 水口:

  • これまでの20年で、「ぶなの森」をはじめとしたESGプロダクトの運用やグローバルイニシアティブへの参画は評価すべきだが、気候変動が深刻化しているのも事実である。今後我々はそのように取り組んでいくべきだろうか?
    損保ジャパンは早いうちからこうした気候変動問題に取り組んできたと思うが、現実には気候変動が深刻化している。取り組んでいるにも関わらず深刻化がなかなか止まらない原因は、どういった点にあるとお考えか。

  •  関:

  • 世の中、社会を変えていくには、人々の意識・行動の問題が大きい。取り組みが先行しているヨーロッパの市民意識と比較すると、日本ではまだまだ環境問題に取り組むと生活クオリティが下がると思っている人が多いなど、意識が変わってきていない。ESG投資が広がっていくなかで、社会は変えられると考える人が増えていくことが重要である。

  • 荒井:

  • 金融界での取り組みによって、気候変動の緩和と適応が本当に成し遂げられるのかは簡単には見えないが、国だけの力では足りないので、民間の資金を活用していく具体的なアクションプランなどが次々に立ち上がり、動き始めている。
    このように、特にヨーロッパではどんどん先に進み、日本とのギャップが広がっているように感じる。投資家も金融機関も、今後より具体的なKPIを捉え、変化を求めていくのかが重要だと感じる。

  • 水口:

  • 一方で「ESG投資が環境や社会に対してどれほどのインパクトを与えているのか」という評価も大事なポイントだと考えるが、こちらについてはどのように考えているか。

  • 中尾:

  • 財務情報に出てこない、社会的リターンについては客観的な評価が難しいが、モントリオールカーボンプレッジの中で、ポートフォリオの温室効果ガス排出量を測定する取り組みを行っていることはその一つ。これからのESG投資には、こうしたマイナスのインパクトだけでなく、社会に与えるポジティブなインパクトについても出来る限り定量化して効果を「見える化」していく努力が求められよう。

  •  関:

  • ESG投資が注目されてきたことで企業の中長期的な価値の向上に注目が集まり、企業もその価値を高めるために取り組んでいる。一方で、環境保全への実質的なインパクトを測るための、様々な情報開示の仕組みも提唱されている。共通の枠組みをつくりそれをみんなが使って取り組みを改善しないと、本当の意味でのインパクトは生まれない。最も大きな課題のひとつである。

  • 荒井:

  • 2015年に、米国エリサ法のフィデューシャリーデューティーの解釈に関して、年金基金がESG投資に取り組むことに肯定的な見解が示された。
    ESGを考慮することが財務にも影響するという理解がすすみ、こうした取り組みが企業価値に影響していくロジックが明確化されてきている。ヨーロッパでもプラスインパクトが確認できる取り組みが確認されている。

会場からも質問が飛び出した。

「エンゲージメントについて聞きたい。エンゲージメントの効果をどう測っていくのか。」

  • 中尾:

  • よく受ける難しい質問。株式市場ではいろいろなノイズが混じってしまうので、エンゲージメントの効果を単純に株価で測定することは難しいと考えている。一方で、当社は企業の中長期の投資価値を分析しており、エンゲージメントがまずは投資価値を高めることに繋がったかどうかが重要と考えている。過去のデータについては全て自社にあるので、こうした効果測定にも取り組んでいる。

  • 水口:

  • 20年前の「ぶなの森」発売から始まった取り組みが、長きにわたって残高を増やし、環境に寄与してきたことは喜ばしいが、地球規模での危機はますます深まり、気候変動や経済格差、ポピュリズムの広がり、今や世界は本当に崖っぷちである。みなさんがそれぞれリーダーシップを発揮し、次の20年を実りあるものにしなければならない。

ぶなの森を動画でご紹介

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ファンドの特色

    • 主としてわが国の株式に投資し、中長期的に信託財産の着実な成長を目指します。
      ・わが国の金融商品取引所に上場(これに準ずるものを含みます。)されている株式を主要投資対象とします。
    • 2
    • 当ファンドは東証株価指数(TOPIX)をベンチマークとし、これを上回る運用成果を目指します。
      ・東証株価指数(TOPIX)とは東京証券取引所第一部上場全銘柄の基準時(1968年1月4日終値)の時価総額を100として、その後の時価総額を指数化したものです。
      東証株価指数(TOPIX)は、東京証券取引所の知的財産であり、東京証券取引所は、TOPIXの算出もしくは公表の方法の変更、
      TOPIXの算出もしくは公表の停止またはTOPIXの商標の変更もしくは使用の停止を行う権利を有しています。
    • 3
    • 環境問題への取組状況と本来の投資価値の両面から分析し、評価の高い銘柄に投資します。

投資リスク

  • 《基準価額の変動要因》
    当ファンドの基準価額は、組入れられる有価証券等の値動き等による影響を受けますが、これらの運用による損益はすべて投資者の皆様に帰属いたします。したがって、投資者の皆様の投資元本は保証されているものではなく、基準価額の下落により、損失を被り、投資元本を割り込むことがあります。また、投資信託は預貯金とは異なります。
    当ファンドの主なリスクは以下のとおりです。
    ※基準価額の変動要因は、以下に限定されるものではありません。
  • ◆価格変動リスク
    株式の価格は、国内外の政治・経済情勢、市況等の影響を受けて変動します。組入れている株式の価格の下落は、ファンドの基準価額が下落する要因となります。
  • ◆信用リスク
    株式の価格は、発行体の財務状態、経営、業績等の悪化及びそれらに関する外部評価の悪化等により下落することがあります。組入れている株式の価格の下落は、ファンドの基準価額が下落する要因となります。
    また発行体の倒産や債務不履行等の場合は、株式の価値がなくなることもあり、ファンドの基準価額が大きく下落する場合があります。
  • ◆流動性リスク
    国内外の政治・経済情勢の急変、天災地変、発行体の財務状態の悪化等により、有価証券等の取引量が減少することがあります。この場合、ファンドにとって最適な時期や価格で、有価証券等を売買できないことがあり、ファンドの基準価額が下落する要因となります。
    また、取引量の著しい減少や取引停止の場合には、有価証券等の売買ができなかったり、想定外に不利な価格での売買となり、ファンドの基準価額が大きく下落する場合があります。
  • 《その他の留意点》
    ◆クーリングオフ制度(金融商品取引法第37条の6)の適用はありません。
    ◆収益分配金は、預貯金の利息とは異なり、投資信託の純資産から支払われますので、収益分配金が支払われると、その金額相当分、基準価額は下がります。収益分配金は、計算期間中に発生した収益(経費控除後の配当等収益および評価益を含む売買益)を超えて支払われる場合があります。その場合、当期決算日の基準価額は前期決算日と比べて下落することになります。また、収益分配金の水準は、必ずしも計算期間におけるファンドの収益率を示すものではありません。投資者のファンドの購入価額によっては、収益分配金の一部又は全部が、実質的には元本の一部払戻しに相当する場合があります。ファンド購入後の運用状況により、収益分配金額より基準価額の値上がりが小さかった場合も同様です。
    ◆ファンドとベンチマークは組入銘柄が異なることがあり、ファンドの運用成績はベンチマークを下回る場合があります。

詳細については、投資信託説明書(交付目論見書)をご覧ください。

お申込みメモ

  • ●税金
    ・税金は表に記載の時期に適用されます。
    ・以下の表は、個人投資者の源泉徴収時の税率であり、課税方法等により異なる場合があります。
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    • 確定拠出年金法に定める加入者等の運用の指図に基づいて購入の申込みを行う資産管理機関および国民年金基金連合会等の場合、所得税および地方税がかかりません。なお、確定拠出年金制度の加入者については、確定拠出年金の積立金の運用にかかる税制が適用されます。
    • 法人の場合は上記とは異なります。
    • 2020年1月1日以降の分配時において、外国税額控除の適用となった場合には、分配時の税金が上記と異なる場合があります。
    • 税法が改正された場合等には、税率等が変更される場合があります。税金の取扱いの詳細については、税務専門家等にご確認されることをお勧めします。

ファンドの費用


●当該手数料等の合計額については、投資者の皆様がファンドを保有される期間、売買金額等に応じて異なりますので、表示することができません。
当資料のご利用にあたっての注意事項
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    • 当ファンドは、値動きのある証券に投資しますので、基準価額は大きく変動します。また、外貨建て資産に投資する場合には、為替リスクがあります。投資信託は、リスクを含む商品であり、運用実績は市場環境等により変動します。したがって、元本が保証されているものではありません。
    • 信託財産に生じた利益および損失は、すべて投資者の皆様に帰属します。投資に関する最終決定はご自身の判断でなさるようお願い申し上げます。
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